北海道大樹町で挑む
「宇宙版シリコンバレー」構想

北海道大樹町で挑む「宇宙版シリコンバレー」構想

小田切 義憲 (83回生)

 今回は、宇宙に羽ばたくグローバルOBとして、83回生の小田切義憲さんにお話を伺いました。

 大学卒業後すぐ全日空に就職、羽田空港の再国際化時に空港オペレーション現業部門の責任者となり、ANA総合研究所を経て、現在は北海道のSPACE COTANの社長として、空港を中心とした地域創生に取り組んでいます。

クラブ活動や母校の思い出・記憶に残る先生

 高校時代は剣道部に在籍、また、生徒会の行政委員・興風祭実行委員長を務めていました。

 興風祭のテーマを決めるのが大変でしたが、その中で生活指導部の先生方と議論したことが心に残っています。人としての生き方について、美術の石和(いしわ)先生と世界史の中田先生から鍛えて頂きました。中田先生の難しい哲学のお話を聴き、議論しながら興風祭のテーマを決めたのが良い思い出です。両先生は早稲田の先生らしい私立ならではの先生だと思っています。

 今の仕事を新たなライフワークとして、2021年4月北海道に単身移住しました。剣道部のOBが札幌におられることから早速連絡したところ、校友会北海道支部の総会に参加できました。北海道に来る前は仲間にいつでも会えるし、仕事が忙しかったこともあり、校友会に参加したことはなかったのですが、こちらでは先輩や後輩に会えるので、わざわざ帯広から駆け付けるようになりました。

今まさに取り組んでいる仕事

JAXAやNASA等国の研究者しか宇宙に行けなかった時代から、2021年以降研究者ではない民間人が宇宙に旅行に行ける時代になってきました。イーロン・マスク氏の火星移住計画も遠い夢ではなくなってきたかも知れません。宇宙旅行ビジネスだけではなく、小さい衛星をいくつも打ち上げ、宇宙から様々な地上のデータを収集し、そのデータを利活用するビジネスも広がっていきます。

またロケットを旅客機のように使用して地球上を1時間以内で結ぶ「有人高速二地点間輸送(Point to Point/P2P)」という新たな移動手段も開発中です。宇宙機を利用して日本とニューヨークを1時間で移動できれば時差に悩まされず日帰り出張も可能です。ちょうど60年前に東海道新幹線が開業したときと環境変化は似ています。新幹線のおかげで東京と大阪の日帰り出張ができるようになりました。移動距離が20倍になったわけです。

種子島、鹿児島についで大樹町は3番目の射場になります。国の支援もあり、「企業版ふるさと納税」で11.6億円、デジタル田園都市構想の交付金11.6億円を活用して第1期工事を進めており、2025年度後半には完成予定です。

また本年1月、国の宇宙技術戦略による、宇宙戦略基金に採択され、大樹町が将来本格的な宇宙港として整備されることへの大きな一歩を踏み出しました。

大樹町には広い土地があり、水平離着陸機の滑走路と垂直離陸のロケット射場と両方併設することができます。また、南と東は開かれた太平洋であり、航空路と海上航路との緩衝が少なく打ち上げ日程が確保しやすいのです。さらに圧倒的な「十勝晴れ」です。私が小学校4年のときに「未来を描こう」という授業がありました。そのころの夢が50年で実現したのです。漫画の世界が実現されてくるのだとわくわくします。このプロジェクトを友人に紹介され、航空オペレーションと宇宙の親和性があると思い、仕事に飛びつきました。

卒業生・在校生に贈る言葉 

バブルの後半で社会に出たのでバブルで楽しいことの経験なく、いわゆる「失われた30年」を過ごした世代です。当時の元気ある日本を見ていると、今の若い人たちがチャレンジしにくい世の中になってきたのではないかという気がします。

例えば、ユーチューバーはてっとり早く収入を得ることができる仕事ではありますが、持続性の面ではどうでしょうか?

もう少し若い人たちが夢を持って何かに挑戦できるようにするのが我々の役目と考えています。

今、宇宙産業は黎明期です。日本も米中ロシアに次いでかなり頑張っています。アルテミス計画で知られる月への再訪、イーロンマスクの火星移住計画や深宇宙への探訪等壮大な宇宙ビジネスが多くあります。しかし先ず効率的に荷物を運ぶことができなければ夢は実現できません。

より軽量かつ効率の良いロケットエンジンが開発されれば貨物の輸送能力は向上します。

ロケットのエンジン燃焼に関する基本的な概念は70年前にほぼ確立されています。

機体重要の多くは酸素や燃料と言われる推進剤であり、ペイロード(ロケットが運ぶことができる荷物)はかなり限定されます。例えば30トンのロケットに積載可能な正味の荷物は500キロ程度――これのブレークスルーが必須です。また、将来月や火星で酸素や水は活きていくためには必要欠くべからざるものですから、月や火星の内部にある水から作り出す地産地消の研究も必要ですね。

宇宙に飛び出さなくても地上の環境を宇宙から観測してデータを蓄積し、AIを使ってデータ分析するつぎのような衛星ビジネスもあります。

避けることのできない人口減少により人手が少なくても農業効率的に収穫ができるように改善するアイデアを創出する、農業以外でも多方面で業務効率性を向上させるデータ分析のエリアは、理系のひとだけでなく文系でもできます。

地上と宇宙ステーションをエレベーターの様なもので結ぶ「宇宙エレベーター」という構想もあります。素材の製造技術等現実化にはもう少し時間はかかりますが、ISS宇宙ステーションと宇宙エレベーターでつなぐことが可能となれば、民間人が気楽に宇宙旅行できる時代がきっと来るでしょう。ペイロードも宇宙エレベーターで運べばよいわけです。

宇宙の広さからしたら人間が足を下したのは月までしか行っていないのですから!

20〜30年後に実現するように、母校のOBや在校生のみなさんに是非チャレンジしてもらいたいですね。

プロフィール

1987年全日空入社、運行管理部門の現業業務に配属

羽田空港の再国際化時に空港オペレーション現業部門責任者に

2011年LCC(格安航空会社)新会社エアアジアジャパンの設立に参画

2016年((株))ANA総合研究所 空港を中心とした地域創生の調査・研究

2021年SPACE COTAN、現在に至る

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